ずっと見たいと思っていた。
初回は劇場がいいと思い続けて後回しにしてきたけど、ようやく見ました。場所は池袋のグラシネ。BESTIAという良い音響の箱でやってくれたのも嬉しい。
『RRR』はもちろん、『マガディーラ』も鑑賞済みなので、その2つと比較した感想も述べていきます。
まずはTwitterにも載せた感想……というか上映中頭の中をグルグルしていたことのまとめから。1→2の順に鑑賞。
バーフバリ1
正直1だけでは登場人物と舞台と世界観を把握するだけでいっぱいいっぱいだった。
重要な登場人物が多いうえ、主人公の父と子を同じ役者が演じてるから回想が回想だってわかりにくい。
だからなのか、最初は話に入り込みづらかった。
元々私が異国感溢れるファンタジーの世界観や固有名詞を覚えるのが苦手、というのもあるんだけど。
シンプルでわかりやすい大筋の『RRR』や、序盤に現代パートのラブコメを持ってきているおかげでとっつきやすい『マガディーラ』より、ストーリーと世界観に入り込めるまでが長かった。
あと二部作だから覚悟はしてたけど、シヴドゥを主人公として感情移入して見ていたから、回想で同じ顔した別人が圧倒的主人公力(ちから)で活躍しだしてどういう顔したらいいか戸惑ってるうちに後編への“ヒキ”で終わってしまった。
現時点で意味不明なところ全部解決してほしい気持ちはあるけど、誰が主人公でヒロインなのかよくわからんまま終わってしまったから正直微妙……とすら思っていた。
この時点では。
バーフバリ2
冒頭に1のあらすじ解説がある。
私が1日かけて消化した1の内容がめちゃくちゃ爆速で綺麗に要約されていて笑ってしまった。
ぶっちゃけこの作品は2から見てもアリ、というか2から見るべきかもしれない。
とっつきやすさが全然違う。
ラブコメやギャグ、中毒性の高い挿入歌、ダンスなどエンタメ部分を頭空っぽにして楽しめる方は2だと思った。
映像の多幸感がすごい。
話としてはシヴドゥ(マヘンドラ)が自分の出生に気づき、父の代から続く因縁に決着を付け、奪われたものを取り戻していく作品なのでシヴドゥが主人公なんだよね。……ってことに2の終盤で気づいた。終盤のアクションはそれだけの説得力があった。
アマレンドラの回想に力が入りすぎててついつい意識を持っていかれる。それが終盤のバトルや展開に生きてくるから力入れてナンボではあるんだけど。
そういう意味だと1から順番に見る作品だとは思う。
貴種流離譚だからタイトルからしても最後はマヘンドラが王になって終わるのは予想ついてたけど、“そもそも父と子は生き写しであっても別人なのに、父の人望をそのまま重ねられて息子は本当にそれでいいのか?”という疑問についてはわりと丁寧に答えが出されてるなぁと感じた。
赤ん坊の何も知らんときから母と約束したんだよな。だからわけもわからず無性に滝の上が気になった。
実際に上まで上がる気力に繋がったのが、拾った仮面の向こうに想像した美女なのはそれでいいんか?という気がしなくもないけど。というかアヴァンティカがそれだけの役割でびっくりした。
主人公はシヴドゥ(マヘンドラ)だけど、ヒロインはその実母という……これに気づかずにいたから1が意味不明だったのかもしれん。
デーヴァセーナとカッタッパとシヴァガミに対する理解が深まるだけで終盤のカタルシスが全然違う。
あと、EDでのおじいさんと子どもの会話に監督のフラットな物の見方が詰まってて信頼できる……って思った。
『バーフバリ』は王の血を引く息子が父の無念を晴らし奪われたものを取り返して王位に返り咲く話だけど、王としての適性は決して血統由来のものではないって遠回しに言っている。
神話や信仰を物語に取り入れて華々しく演出するけど、本質はそうではないというフラットさが好き。
『RRR』や『マガディーラ』と比較して
それぞれジャンルが違うものの、やっぱり同じ監督・スタッフだなぁという作家性というかいつもの味らしき“濃さ”をめちゃくちゃ感じた。
その一方で、扱うテーマや描写の幅広さに驚いた。RRRが好きな人はバーフバリやマガディーラもおすすめ、というのは理解したけど、全部見た人も好みが分かれそう。
ざっくり分けると、
転生ラブコメが見たい→マガディーラ
華やかなファンタジーが見たい→バーフバリ
熱い友情ものが見たい→RRR
って印象。
とくにRRRとバーフバリは恋愛と友情の配分と画面構成、ヒロインを初めとするサブキャラクターの情報量が真逆なので、片方が好きだからといってもう片方が好きとは限らないと思う。
以下比較
【観点】バーフバリ⇔RRR
【主人公】王族⇔庶民(活動家)
【女性キャラ】フィジカルが強い⇔メンタルが強い
【舞台】架空の古代王国⇔100年ほど前のインド
【サブキャラの尺】多い⇔少ない
【関係性の比重】恋愛⇔友情
【ダンス】多い⇔少ない
【ED】踊らない⇔踊る
【画面から受ける印象】華やか⇔泥臭い
主人公の生命力に関しては、死にそうで死なないRRR、死なないと名言されてるマガディーラ、死ぬのがわかってるのになかなか死なないバーフバリ(父)って感じ。
VFXの技術や演出のムダのなさは順当にマガディーラ→バーフバリ→RRRと洗練されていってる印象。
ただ洗練されてるだけじゃなくて、それぞれ違ったことに挑戦してるのかなぁって感じる。
便宜上、マガディーラが原点(当時の予算や技術からするとかなり挑戦したことが多いらしいのはパンフで把握済み)とすると、バーフバリは技術的なことに加え、長い尺だからできる濃い世界観と物語が独特だと思うし、RRRはこれまでサブ要素だった男同士の友情を軸にして恋愛要素を控えめにしている……とわかりやすく趣向を変えている。
演出面だとダンスへの導入や回数かな。どんどん自然になっていってる気がする。マガディーラは本筋に関係ないダンスもあったけど、バーフバリはラブシーンにオブラートを被せるためにダンスを使っている感じで、RRRはダンスバトルをするシーンとEDでしか踊らないというド直球さ。
私はRRR→マガディーラ→バーフバリの順で見たので、バーフバリもEDは踊ると思ったんですけど踊らなかったね。理由をご存知の方はいるだろうか……それだけ気になる……。