【同人女の感情】『私のジャンルに「神」がいます』を読んだ

『私のジャンルに「神」がいます』を読んだ。

自分はずっと「同人女の感情」「同人女」とこのシリーズを呼んでいるが、これらにピンと来ない人もこう言えばわかるのではないだろうか。

「おけけパワー中島」

6月頃、同人女同士の百合漫画が伸びてるのを見て以来、「なんだこれおもしれー!」と密かに追いかけていた。

が、気づいたらその“同人女”の層から共感と反響を呼び、かつての白ハゲ漫画のような伸び方をするようになっていた。それが「おけけパワー中島 」である。
単行本(通称『ジャン神』)の帯では煽り文におけパが使われている。それほど共感と興味をひく“概念”だ。

最初に断っておくと、自分はそのBL二次創作同人界隈の人間(同人女)でない。
カップリングは男女と女女を中心にしつつも、主食は性別や恋愛感情の有無を問わない巨大感情である。

更新される度にTwitterで感想を垂れ流していたので、描き下ろし部分について語っていきます!


☆紙で手元に置いておける幸せ

こんなにハマったTwitter漫画そうそうないので、単行本になると聞いた時は素直に喜んだ。

本来自分はTwitterでバズってる作家一本釣り!みたいなのクソ嫌いなんですけど(めんどくさいオタク)、これだけバズると同人誌で出されたら絶対入手困難になるし作者の負担がハンパないので、欲しい人全員に行き渡る措置として商業出版は正解だと思いました。本当にありがとうございます。

カバーやサイズ感がコミックエッセイみたい。
自分はコミックエッセイを買わないんだけど、母はエッセイが好きでこういう装丁の本をよく買ってくるので、自分にとって馴染み深いようなそうでないような変な感覚がする。

まぁ、コミックエッセイみたいな装丁だろうが実在のオタクたちがどれだけこれに共感しようが、この作品はフィクションなんですけどね……。
よくあるオタクエッセイと間違えて買う人いそう。
ってかそれが狙いなのか……?
Twitterでリアルタイムで追ってたオタクなら基礎知識だろっていう同人用語(「字書き」「ジャンル」など)の解説ページが冒頭にあったし……。

コミックエッセイみたいな見た目なのに、タイトルが「私のジャンルに神がいます」だし帯は「巨大感情」とおけパだしで、表紙から得られる情報に馴染みしかないのがまた頭がバグる。楽しい。

か、カバー裏!!!愛の独白!!!綾城さんの本じゃないか!?!?!?うわそういう遊び心好きだよ……買うなら紙一択やんこんなの……。もちろん紙で買ったが……。


☆友川の送ったマロ

一字一句、字を書くオタクって感じでニッコリしちゃった。
文章のノリやひとつひとつ萌えたポイントを言語化していく語彙力に、あ〜小説読む人だ!ってニコニコしちゃう。
TLにいる文字書きや小説ジャンルのオタクは、よくこんな感じの細かい感想書いてるもん。

ってか友川さん、998/1000字って。いやすげぇなお前……。こんな詳しい感想もらえたら誰だって嬉しいし、あの感情をこれだけのマロに出力できる精神の強さと文章力……頑張ったね友川さん……。
負の感情を創作や前向きなメッセージに書き換えて出力できるから、友川さんはきっとジャンルを離れた人を呼び戻すだけの力を持った字書きになれたんだろうな。

あと、この漫画でマロと呼ばれている匿名ツールは「マシュマロ」のことなんだろうな〜と思ってたけど、マカロニで笑ってしまった。そうだよな、実在のサービス名を出すわけにいかないもんな。


☆天才字書きの生まれた日

あ、あ、あ、JK綾城さん!!!!
前髪がちょっと違う……かわいい、めっちゃかわいい〜!!!
ルックスがハチャメチャに好みで気が狂うかと思った。
当時からマニッシュな私服姿は健在で、かつ制服姿はミニスカート……クールビューティな女の子のスカート、めちゃくちゃ良いよね……良い……。
ってか高校生!?大人っぽ!!!!!!!!

こんなに大人っぽくて美人なのに、オタクでネット友達と会うときは緊張して固まっちゃうの、あまりにも“人間”なんだ〜!!!ってなんか嬉しくなっちゃうな……コミュ障オタクだから勝手にシンパシーを感じてしまう。絶妙な親近感……。

ナツメさんが本編に出てこないのも、顔がぼやけているのも、もうすでに綾城さんの前を去っていった(綾城さんの方から去った?)人だからなんだろうな。
ナツメさん、自分から書くのを勧めておいて、綾城さんにブクマ数抜かれたり神に認知されてるのを目の当たりにして嫉妬をこじらせるの、めっちゃ女の感情!!!って感じで最高じゃないっすか!?
少女漫画とかでよくある、「私の方が先に好きだったのに」「私の方が先輩なのに」ってやつじゃない!?
何も考えずに無垢な友人に男の子やスポーツ、芸術といった夢中になれるものを紹介し、気づいたら自分以上に染まってたけど追い抜かれた気持ちがしていい気分しないっていうそういうやつじゃん……。

本編だと友川さんや柚木さんがこのときのナツメさんに近い感情を持ってたと思うんだけど、毒マロを送らず作品に昇華させた友川さんと、綾城さんの実力を認めつつも「やっぱりムカつく」と敵意を創作にぶつけてアンチからライバルになった柚木さんと違って、ナツメさんはその嫉妬に押しつぶされてしまったんだよな。
明確な描写があるわけではないけど、現在の綾城さんの交友関係にナツメさんの影がないこと、毒マロの相談を中島にしかしてないことから、たぶんマロを送ったのはナツメさんで、綾城さんもそれに気づいてたんだろうな。

強い人間ばかりじゃない。
ネットにアップされた本編では感情を創作にぶつけることができる強い人達ばかりだったけれど、その影では嫉妬で毒マロ送ったり筆を折ったりする人もいた。ナツメさんはそこまで強くなかった……。

綾城さん、創作を始めたばかりの頃にこんな強い嫉妬をぶつけられるなんてすごいけど辛かったよね。
柚木さんが「たくさんの作品を取り込み、生み出す努力を繰り返している」と評していたけど、書き始めたばかりでこれってことは、ROM専の頃から無意識にその努力をしていたってことだしやっぱり天才なんですよ……(ろくろを回すポーズ)

綾城さんって「同人界のファム・ファタール」と呼ぶにふさわしい存在だけど、その魔性さは書き始めた頃から変わってないんだな……。
夏休みに友人の勧めで筆をとった女子高生が、夢中で作品を書き続け、「こんなに夢中になれることがあったなんて」といきいきするなんて。眩しすぎる。
そらナツメさん病むわ。こんな天衣無縫の天才が自分を軽々と追い越していったらそりゃあな……。
「復活!虹北学園文芸部」の紗弥加とおじさんの関係性じゃん……(?)

綾城さん、心の底から書くのが好きな人なんだろうし一緒に原稿を走ってくれる創作仲間としてお友達になれたら楽しそうだけど、周りのオタク達の巨大感情を見てると「自ジャンルに来ないでくれ〜」という気持ちしかない……。
界隈全体の解釈まで引っ張られるほどの作品とか、自分がROM専のジャンルですら来てほしくない。

「ジャンルが滅多に被らないが、創作や同人活動への熱量・スタンスが近いオタク仲間」としてなら友達になりたい。

「綾城さんもクールビューティーだけど推しに悶える腐女子なのかな……」とニコニコしてたけど、綾城さんってもっと(オタクとしての)お育ちが良いオタクな気がしてきた。絶対文学少女でしょ。

なんだろ、BLを書くのも「BLのオタクだから」というよりは「文学の一ジャンルとしてBLも読むし、その経験値からBLの解釈にたどりつき、それを出力しているだけ」な気がしている。
国語の成績がめちゃくちゃ良いタイプ。

同じ「後発の字書き(友人)が神になってしまった」オタクでも、嫉妬をぶつけたナツメさんと、創作仲間として綾城さんを支えた中島……。

この状況なら誰でもナツメさんのようになるんじゃない?という気がしてくるけど、中島はたぶんそこまでブクマ数とか神からの認知とか気にするタイプじゃないんだと思う。
本編だとたまきさんに近いのかも?
たまきさんはブクマつかなくて悩んだこともあったけど、「書きたいから書く」「自ジャンルもっと増えろ」の精神で活動してるし、おけパもたぶんそれに近い感じで、綾城さんが自ジャンルの字書きになってくれたことが純粋に嬉しかったんだと思う。
「あ!推しを書いてくれる作家が増えた!やった〜!」って感じなんだと思う。

通話で励ましたのも、綾城さんを気づかったのも、字書きとしては後輩にあたる彼女を放っておけなかったんでしょ……。創作やめてほしくなかったんでしょ……おけ綾……いや私は綾おけ派なんですけど……。
おけパもやっぱり過去に毒マロ的なメッセージをもらったりしてたのかな……作中に出てくる感情と同じものをこの時点ですでにぶつけられまくって強くなっていた女、とかだったら先代主人公っぽくてめっちゃカッコよくない?(おけパをなんだと思ってるんだ?)

ところで、通話中の綾城さん、めっちゃまつげ長いっすね。めちゃくちゃ落ち込んでるシーンだから、それを美しいというのもアレだけど、憂いを帯びた目元が涼しげでめっちゃ美人ですね。うん、美人だ……。
高校生の頃からこんなクールビューティーとか、もしクラスメイトだったら読書している姿に勝手に憧れて淡い恋愛感情を抱いてしまう……。
学校では休み時間になると教室の窓際や図書室で本を読んでいる大人しくて凛とした雰囲気の文学少女だよ絶対……ウワ好きになっちゃうな……(幻覚)