ループ・ループ・ループを読んだ

⚠内容のネタバレを含みます(主に後半)

パステルカラーのかわいいイラストに惹かれてジャケ買いした。

読んだことない作家だったけど、レーベルがこのミス大賞ということは、ループものでありながらミステリなのか……ということで期待して読んだ。

……当たりでした。すごく「こういうの読みたかった〜!」を的確についてくる感じ。

読みやすくて、ファンタジー要素もあって、読後もさわやかな青春ミステリが大好きなので。

わかりやすいループものの構造をしていながら、さりげない日常描写に着実に伏線を仕込んで鮮やかに回収していく。
読みやすい文章と合わさって、ありえんほどテンポが良い。マジ読みやすい。
ループものや時間ものって読んでてこんがらがるんだけど、この本は全然そんなことない。

ループの原因は誰なのか?連続殺人犯の正体は?2人の女生徒の死の真相は?
全てが「俺」こと郁郎の繰り返す日常に転がっているのに、読者も郁郎も、かなり物語が進むまで全く気づかない。情報の出し方がめちゃくちゃ上手い。




⚠以下幻覚




読んでる途中から、この本を原作にしたゲームがあったらいいな〜!という気がしてきた。(すぐ幻覚を見るオタク)

郁郎を操作して、ループの原因を探る推理アドベンチャー
生徒を助けたり、仲間を増やすと物語が先に進むようになるんだけど、選択を間違えると何回ループしても先に進まなかったりする。

小説とは違って、基本的にどのイベントから片付けてもいいんだけど、大まかな流れは決まってる感じで……。
玉尾さんと貴久と文太を仲間にする→森川さんの過去をきく→悠樹の謎に迫る→殺人犯の正体に迫る→ループの原因を突き止めるって感じで、日付はループしつつも物語の続きは解放されていく。
玉尾さんを仲間にしないと1年C組のイベントは起こらないし、文太と貴久を仲間にしないと焼きそばパンのイベントは失敗する……みたいな感じで……。


☆考察モドキ

ところで、作中では何回11月24日を繰り返してるんだろう。数えるのはおっくうだな……。

日常系学園ファンタジーって感じのリアルで親近感のわく日常描写。なぜかループする11月24日という異常な状況に加え、「同じクラスから2人死人が出た」「この街には連続殺人犯がいる」という不気味な状況。この非日常感とちぐはぐな感じがとても好き。


最後に玉尾さんが「もしかしてみんな死んでるのでは?」って冗談で言ったのちょっとドキッとした。

ループの原因は大切な人を守るための呪いだった、というオチで、ループに気づく条件も明確に提示されていた。

でも、京子の霊(?)はなぜかループに気づいた人間にだけ見える理由も、本来の日常で遭うはずだった事故を回避したらループに気づく仕組みそのものの理由も不明だよね……。

「あのとき一緒に警察に行っていれば」という悠樹の後悔に対して、京子は思うところがあったのだろうか。
「大切な人を殺人者にしたくない」という優しい呪いだけど、ずっと彼を“復讐を実行に移そうとした日”に閉じ込めておくのってとても残酷だと思うんだよ。ずっと彼女に囚われたままだから。
京子の母が悠樹に対して語った願いとは真逆じゃん。
悠樹が前に進めるように、ループから抜け出すヒントとして、“モブキャラ”がループに気づいて行動を起こす仕様を組み込んだのでは?

あのとき先生はループすると信じきって窓から身を投げたけど、自首していたとしてもループは終わっていた。先生の生死はループに関係ないので……。
どっちみち、悠樹ひとりなら先生に殺されていたかもしれないし、彼が死ぬことでループが終わってしまったら、京子としても不本意だと思うんだ。

でも、真相を調べて悠樹にたどり着いてくれる人が現れれば、彼が死ぬことは回避できる確率が上がる。
もしかしたら、森川さんもループに気付いた側の人間になっていたかもしれないし、そうしたらループの原因を京子側の事情から迫っていく物語になっていたのでは?

ループに気付いた人間にだけ京子が見えるのも、みんな死んでるからではなく、「悠樹を助けて」というサインだったのでは?
不審な女生徒が死んだはずの京子だとわかれば、そこから仲の良い悠樹にたどり着く人がいるかもしれない。

京子にできるのは、“悠樹が殺人を決行した日”をループさせることだけなのかもしれない。
それが優しい呪いと表現されているの、めちゃくちゃわかりみがすごい。
大切な人を守るために、その人が殺人を決行した日を“繰り返す今日”にして閉じ込めるってたしかに愛だけど残酷だよ……。