『丸太町ルヴォワール』を読んだ

円居挽作品のフレッシュな感想第3弾。
キングレオシリーズを読んだという話をしたらRT先で勧められていたので、ルヴォワールシリーズにも手を出した。

1作目は、祖父の死と初恋の女の真相を擬似的な裁判で解き明かしていくお話。

これ、ミステリのなかでも内容の話がしづらいタイプの作品で、頭がこんがらがるけど個人的には大好きなやつだな。
未読の方に見せたくない感想は最後の方に書くので注意。

キングレオで男同士の巨大感情に殴られたと思ったら、ルヴォワールではクソ重たい女の覚悟と生き様にやられた。感情で殴る作風なんだろうか。



☆夢に振り落とされるな

作中では夢だなんだと表現されてるけど、ぼんやりした事件概要とは裏腹に、擬似法廷での騙し合いが激しく、とにかく二転三転する。
ハッタリや証拠の捏造は当たり前、読者からすればハンドルをみんなで奪い合ってる暴走車に乗ってるようなもんだよ。




☆し、城坂論語〜〜〜!!!!

キングレオとルヴォワールの彼はスターシステムということでいいのかね。
春音あいらと七星あいらみたいな、パラレルワールドの同一人物と見てよさそう。

自分は城坂論語キングレオで知ったので、ルヴォワールの城坂論語が純粋に初恋の人を追いかけている青年だったことにめちゃくちゃびっくりした。
性格の悪さと頭の良さはキングレオ論語に通じるものがあるけど、なんでこんな人間らしく育ってるんだ。ルージュとの出会いが分岐点なのだろうか。

つーかこうして見るとルヴォワールの論語はまだ頭が良くてひねくれてるだけの坊ちゃんって感じだけど、キングレオ論語は犯罪コンサルタントだもんな……何があったんだよ……邪悪さと有害さが段違いすぎる。(ぶっちゃけ個人的には邪悪な方が好き)

いやでもルヴォワールもまだ1作目しか読んでないからね。続編で彼が何するかによってはまた印象が変わってくるのかな。



パラレルワールド

龍樹家ってそんなすごい家だったの?
え……山風さん……?そんな……。
結局山風さんの奥さんは何者なんだ。
落花さんの激重姉貴っぷり良いね。
家や家族のためになんでもする女、重くて大好き。
ルヴォワール世界だと探偵公社は存在しないのかな。名前がチラッと出てきた天親家も龍師の家系っぽいし。
龍師も実質探偵みたいなもんだからどっちの世界にも存在しててもおかしくはないか。

プリティーシリーズのおかげでスターシステムパラレルワールドの同一人物……みたいな概念がめっちゃ好きなので、ついついこういう仕込みに反応してしまう。










以下、未読の方は閲覧非推奨





☆トリックネタバレ

叙述トリック大好き!!!
頭がこんがらがるけど好き!!!
瓶賀の性別、大和⇔撫子、撫子⇔落花……騙された!って思った。単純だけど引っかかっちゃうね。

とくに大和と撫子のくだりは天才だと思った。
審理中に撫子が笑ったってくだりがあったけど、あれって大和のことを指してたってことでいいんだよな……?自信なくなってきた。瓶賀視点ではそれを知ってるから撫子って書いたわけか。そういや、大和としての行動は「美剣士」って書きわけられてた。
三人称的一人称〜〜!!!!


だいぶ早い段階からあおさんを疑ってたんだけど、それすらひっくり返されてしまった。
論語と出会ったルージュのためにルージュを演じた女たちがいた、だけど論語と出会った彼女もルージュを演じていた。
女の感情と生き様、最高……。
かつての恋人を恨む老女、家の未来を背負った若い女、そして演じることで自分を守ってきた少女……。重い。この3人をつなぐのが、慈恩が亡くなった日に論語の前に現れたルージュという幻影なんだよな。


結局、慈恩殺しという点では全員シロだったのも後味が良い。自然死だったというのは審理の初めの方で証明されてたもんな。


登場人物だいたい顔が良いし絵になるのに、叙述トリックが多用されてたり、盲目の人間を欺いたことが事件の要になってるおかげで映像化や漫画化ができなそうなのがもったいない……。
落花さん絶対絵になるのに……。



論語と撫子が幸せになれそうで本当によかった。
あたたかくて優しい謎解きのお話だった。